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編集長さくまより、こんにちは。 

お話しベタなさくまがエイヤッとはじめました、この企画。

その記念すべき第1回目にお呼びしましたのが、ピチチ5の福原充則さん。

福原さんは2014年にベッド&メイキングスで野外劇『南の島に雪が降る』を上演されました。

つまり、さくまたちにとって、“野外劇”の先輩です!

第1回目の今回は編集長さくま自ら、福原パイセンに挑みます。

北区王子の、とある公園にて、ピクニック風の準備をして待ちます。

だってテーマは「野外劇」だもんで。パンとコーヒーと虫除けをお供に。

それではどうぞ、はじめりはじめり〜。

 

 

さくま   わー。こっちです。こっち。今日はピクニックなんですよ〜。

 

ふくはら うん・・

 

さくま   ・・・!

 

ふくはら ピクニックに対して反応薄くてごめんね・・男の子だから。

 

さくま   はい、大丈夫です。ここ座れますか?(お家型のベンチは子供用)あの、頭がね、当たっちゃうかなと思って。だから座れなかったらここじゃないところに移動しましょう。

 

ふくはら ああ屋根がね。低いね。(家に入ってみる)・・・。

 

さくま   やっぱり違うところにしますか?

 

ふくはら あ。でもこうやって、こうやって座ったら大丈夫だ。(半身を外に出す)こう座る。腰がね、痛くて。

 

さくま   わ!ごめんなさい。あ、でもいいですねー。うん。うん。(赤い屋根のおうちに、赤い帽子の福原さんがいい)あのほら、福原さんアイスコーヒーをどうぞ。パンも。

 

ふくはら さっき蕎麦食べちゃったからな。(クロワッサンを食べる)

 

さく  だら〜っと始めていいですか?(もう十分だらっとしている)

ふく  うんうん。

さく   今回、私たちは、小豆島の大部というところで見つけた『砂子造船所』という造船所の跡地で演劇を作って、そこで上演するんです。ここは、3年前から使われていないんですけど、山も海もあって、朽ちた小屋がたくさんあって、使われてないレールがあって、そのレールが海に続いていて、この景色を目にしたとき、感動したんです。高揚しまして。

 

ふく   え、でもそれ地元の人にとっては普通の景色なんじゃない?(笑)

 

さく   そうなんですよ、そうなんです。(笑)私たちも、それは心配したんです。地元の人にとっては特別な場所じゃないんじゃないかなって。でも大部の人たちにとっては、いつも自分たちが見ている景色で演劇が行われることによって、そこは特別な場所になるんじゃないかなと思ったんです。大部から少し離れた、土庄港や坂手港の方たちで、この造船所のことを知らない人も沢山いると思うし・・・。うん、でもまあ不安なんですけどね・・・。不安。までも、そこでやるんですけどね。

 

ふく   ははは(笑)

 

さく   福原さんは、野外劇と言っても『南の島に雪が降る』ではテント建てましたよね。

ふく   うんでもね、俺も来年テントも何もないところでやるつもり。

さく   ええー!そうなんですか。どんなところで?

ふく  場所はまだ決めてないんだけど、多分公園になると思う。テントも建てないし、多分仕切りもしないから、場所はどこでも出来ると思ってる。(笑)

 

さく   へぇ〜。ここでも??

 

ふく   うん。ここでも出来ると思ってる。まあ、だから色んな考え方があるじゃん。場所ありきの場合もあるし、俺はどっちかっていうと、野外でもできるフォーマットにしておきたいってだけだから、結果、劇場でもやってもいいし。電源も取らないでやるつもりなんで、そうなったらもう本当にどこでも出来るからね。

 

さく   そっか。全然違いますよね(笑)。私たちは、そこで作ってそこで上演することに拘っているから、そこで作ったものはどこにも持って行けない。次、違うところでやるなら、またゼロからです(笑)

 

ふく   まあでも野外は本当にね、体力取られるんだよ。1日外にいるだけで何もしてなくても疲れるから。これほんと。野外芝居云々以前に元山岳部だから、俺。

 

さく   山岳部!!はああん

 

ふく   シート敷いて、寝てるだけでも疲れるから、日光って結構体力持ってかれるから。あ、外で寝る練習した方がいいよ。

さく   ふふふ

ふく   ピクニックいっぱいやればいいんだよ!

 

さく   なんだぁ雑なアドバイスを。

 

ふく   (笑)ピクニックとBBQいっぱいした方がいいよ、本番までに。

 

さく   いやね、そういうことをやってこなかった2人が集まっちゃったんですよ。私は、でも両親がキャンプ好きだったから、小さい頃はしましたけど。でも今は、便利ですよね。手ぶらでBBQもキャンプも出来るところ多いし。あそうですよ!私たち今回手ぶらなんです。手ぶら演劇!何も小豆島に持っていかずにやるんです。何も無くてね、女子2人だし、力も無くて経験もないし、どうしたら良いと思いますか?アドバイスを・・・。

 

ふく   えー・・頑張れば良いんじゃない?(笑)

 

さく   福原さんは、『南の島に雪が降る』のとき、テント建てたり仕込んだりするのに、総動員だったじゃないですか。それはそうであった方が良かったってことですか?

 

ふく   総動員じゃなくてもできるよ。例えば以前出させてもらってたゴキブリコンビナートは、10人いない状態で仕込んでたと思う。その代わり3〜4日かけて仕込んで、全員日焼けして真っ黒になって本番やってた(笑)

 

さく   (苦笑)

 

ふく   バラシは本番終わった直後から、一睡もしないで48時間ぶっ続けとか。なんか休憩もしないの。で、大体怪我してるから、ゴキブリの本番後なんか。いつ病院行こうかなぁとか考えながらずっとバラシ。

 

さく   ほおー(大尊敬)

 

ふく   だから頑張れば出来るんだけど、ゴキブリの話をしてもみんな信じてくれないからさ(笑)。だから、総動員したけど。無茶すれば出来るよ。

 

さく   はいぃ。

 

ふく   限界がここまでって、大抵は決めるじゃん。その想像があるじゃん。でもそれを超える人を1回見ると、あ出来るんだなって思うよ。

 

さく   超人を

 

ふく   あ、あとね、誤解して欲しくないのは『南の島〜』は総動員して楽に仕込んだわけじゃなくて、総動員した上で地獄だったから。それはあの時のスタッフさん全員の名誉のために言っておきたい。失踪したスタッフもいたけど、恨んでないくらいだから。そりゃ逃げるわなって(笑)

 

さく   楽だったんだろうなとは、1ミリも思わなかったです。『南の島〜』は、全部が全部面白かったので、今だって簡単に、あの公園でのできごとまるごと思い出せてしまいます。自分の身体に体験としてしっかり残っている。野外でテントを建ててやるというのは、最初から決めていたんですか?

 

ふく   『未遂の犯罪王』の時点で野外でやるつもりだったの。

 

さく   そうだったんですか!

 

ふく   でも上手く交渉がいかなくて。すみだの倉庫(すみだパークスタジオ)になったんだけど。『南の島〜』は題材的に、南の島に歌舞伎座を作るっていう原作だったから、じゃあどこか公園に、海沿いに、劇場建てましょうかっていう。

 

さく   歌舞伎座が解体されてから向こうに見える海が、現代の海だったじゃないですか、それが私はとても良かったのですが、最後の花火も(千秋楽のみ)。その現代の海には、何か理由あったんですか?

 

ふく   ない。東京の条件的に、海辺の公園で、借りられるところがいくつかしかなくて、その中で、あそこが(お台場潮風公園)駅からの距離とかで、ベストかなって。

 

さく   どこまで考えますか?劇場って、トイレがあって冷暖房が付いてて、椅子があってって、そういう見やすい環境がほとんどの場合、揃ってるじゃないですか。でも野外で、しかもその場所に何も無い時は、そういうサービスの設定を0から100までの100をどこに作るかって、それもこちら側が決められることで。

 

ふく   誰を相手にしてるかだけど、でもそれは好みでいいんじゃない?便所(トイレ)ないのキツイなって思うけど。特に女の人とかね。

 

さく   そうですよね。

 

ふく   俺とか立ちションすればいいじゃんって思っちゃうけど。でも山岳部としても、山に行けば行くほど、意外と罪悪感ある。雄大な自然に、立ちションするのって。

 

さく   あーわかります!

 

ふく   でも便所(トイレ)以外のことは、個人の感覚で言ったら、何もいらないんじゃない?って思う。だから、今度やろうとしているのは、雨ふってもそのまま、屋根無いからお客さんもずぶ濡れで見ましょうっていうことなんだけど。お客さんそれじゃ来ないよっていう考え方もあるんだけど、逆にいうと、場所代とか小屋代に予算かかって無いんだったら、“今日お客さん0人でした”っていう企画に挑戦できるなっていう考えはある。まぁでも、ギリギリの環境に慣れて無いお客さんだっているからね、小劇場のお客さんでも昔に比べたらいい環境で見てる気がするから。

 

さく   はいー、私も本当はそういうことしたいんです。雨が降ってもやりたいし、お客さんが来なくてもやりたい。海沿いなのでね、もちろん安全だけは第一に。トイレとかも、生活の一部ですからね。こちらでも近くの公民館とかを案内してとか、対策は考えているのですが。

 

ふく   結果的にはお客さんを選ぶことになるっていうのは、容易に想像できるけど。過酷な条件にした時にね。でも、別にそれだけの話じゃない?

 

さく   うん。

 

ふく   うん。そもそも、なんだろー(笑)、その瀬戸内海のよくわかんない島で(笑)、

さく   小豆島です(笑)

 

ふく   (笑)そこでやるって時点でお客さんを選んでるんだから。それを、ワクワク“ここに誰が来るんだろう”って、“この条件で誰が来るんだろう”って思えばいいだけなんじゃないの。

 

さく   うん。わたしは、自分で書いたり演出したりしないから、演劇を企画するっていう動機として、今は場所なんですね。そこに行くだけで覚醒するような場所。福原さんの劇は、野外であろうと、劇場の中であろうと、どこか自分が想像もしていなかったところに連れて行ってくれるんです。だからずっと好きなんですけど。じゃあ自分が何かやりたいって時に、自分が特別だと思ったところに人が集まって、そこで演劇を見て、その場所で出会う景色とか、その時たしかにそこに居たっていうこと、そういう体験まるごと覚えていてほしい。・・・あのなんか、覚えていてほしいっておこがましいですけど。

 

ふく   そのさ、見ていい場所だなって思ったわけじゃん?

 

さ   うんうん。

 

ふ   そこに、ピクニックに行く、観光のついでにそこに行くっていうことと、そこで芝居をみるっていうことに、どれぐらい差があることなのかっていうことを考えておけばいいんじゃない。

 

さ   はい。

 

ふ   そんなにいい場所なら芝居見なくてもいいわけじゃない?

 

さ   うん。そうなんですよ。

 

ふ   芝居が邪魔にならないように(笑)みたいな・・。でも、そこで芝居やるっていうことはどういうことなの?と。DDTっていうプロレス団体が、

 

さ   DDT?

 

ふ   うん。路上プロレスっていうシリーズをいっぱいやってるの。遊園地でやったり、こういう公園でやったり。それはすごいの。そこの場所でやる意味があるの、プロレスを。でね、移動しながら見るの。

 

さ   へぇ〜

 

ふ   戦いながらどんどん向こうの方に行っちゃうから、お客さんみんな移動しながらみるんだけど。アドリブでさ、こういう斜めの場所とか(2人が座るベンチの赤い屋根)、象の滑り台とかを使った技がバンバン飛び出すわけよ。そうすると、普段知ってる公園なんだけど、別のもの“あ、公園じゃないんだ”っていうものが湧き上がってきたりとかさ。ジャングルジム1つとってもこんな使い方があるんだって知ることは、新しい世界が開けるのと一緒だから。そういうものがあれば良いんじゃない。

 

さ   うんうん。

 

ふ   ジャングルジムでさ、ジャングルジムに登ってる人の演劇見ても面白くないじゃん。そこが何になっていくのかっていうみたいなこと。DDTの路上シリーズは見たほうが良いと思う。

 

さ   見たいです。

 

ふ   本当に感動すると思う。

 

さ   今でもやってるんですか?

 

ふ   やってる。知らないほうがまずいくらい、DDTは今、大人気団体ですよ。

 

さ   ほおー(後で調べよう・・)

 

ふ   基本的に、俺は今ある演劇で、DDTより上に行ってる人たちは1つもいないと思ってるんだよね。舞台表現としてね。

 

さ   へー!!

 

ふ   落ち込むよ。見に行くと、DDTのプロレス。

 

さ   (見てみたい!)

 

ふ   まあ、でもこれは、そうそう行くの大変だよね。

 

さ   うん大変。

 

ふ   芝居見に行くの。

さ   はい。見に来てもらうの大変です。すごく見に来てもらいたいって思うけど。

 

ふ  何やってるとみんな来るんだろうね。

 

さ   小豆島は、昔は歌舞伎舞台が30以上もあったんですよー。今は2つになってしまったんですけど、今でも毎年そこでは農村歌舞伎をしているんですね。でも演劇があまり盛んでないし、劇場もなくて、映画館もなくて。

 

ふ  あ、だからさ、場所のことで言うとさ、その場所で知ってる映画見るの楽しいよね。そんなに良い場所なら、スクリーン張ってさ。今日もね、上野公園でジョーズやってるらしいよ、野外上映。

 

さ   へー。面白そう!

ふ  去年も、逗子の海岸で映画祭やってて、見に行ったんだけど。浜辺で見るのすごい良かった。

さ   いい。

 

ふ  まずそれって、すごい分かりやすいじゃん。

さ   はい。

 

ふ   楽しいじゃん。

 

さ   うん。

 

ふ   なんかいつもと違う場所で、なんか見るっていうことの楽しさは保証されてるんだよね。で、見る作品も面白いってわかっていれば、かなり安心して、ああ楽しそうっていう。造船所でバックトゥーザフューチャー見たいとかさ、タイタニック見たいみたいなさ。でも、それが芝居になって、しかも新作ってなった時に、面白いのかどうかの保証は欠けるわけだよね、それと比べると。そしたら、何をすれば良いのかって明確になってくるんじゃない?

 

さ   うんうん。

 

ふ   …あ、俺はここまで全部思いつきで話しているけど、勢いでこのまま話続けるけどね、

 

さ   あ、はい、勢いで

 

ふ   つまり面白いんですっていうことを伝えれば良いってことなんじゃない?私たち面白いんです、とか。それって今の時代、だいぶ楽になったっていうか。みんながこれだけスマホ持ってるからさ。Youtube見て下さいって、ディ・・なんとかコード、

 

さ   ユーコード?

 

ふ   YoutubeのURLもさ、

 

さ   URコード?

 

ふ   違う、QRコードだ。そういうので、見て下さいっていえば良いわけでしょ。それが良いかは分からないけど。この人たち面白いって思ったら見に行くじゃん。二月のできごとの映像撮ってあるんでしょ?

 

さ   はい。

 

ふ   それ流せば良いじゃん。Youtubeで。今時結論がYoutubeでいいのかは知らないけど(笑)。あ、あと何か付加価値を付けちゃえば良いんじゃない?DJダンスタイムありますって。ふふふ

 

さ   ふふふ。うん、地元の人には、フラダンス薦められました。始める前にね、フラダンス〜。

 

ふ   ちょっとお腹空いてきちゃった。(クリームチーズベーグルを手に取る)

 

さ   今日のこの対談で、江本さんからも福原さんに聞いて欲しいというリクエストが2つありまして。まずひとつ目なんですけど、福原さんが二月のできごとを見に来てくださって『黒い三人のこども』を傑作だっていって帰られたじゃないですか。そのことを詳しく聞かせて欲しいって、この対談で(笑)

 

ふ   なるほどね。面白かった。1本目があんまり面白くなかっただけに。(笑)

さ   それは、カットせずに残しておきますね。(笑)

ふ   それは、残して大丈夫。(笑)

さ   (笑)

 

ふ   いや、だってあれ、すごい面白かったよ。何が面白かったかちょっと昔すぎて忘れちゃったな・・

さ   そんなに昔じゃ・・。

ふ   台詞無かったよね?無言劇?

さ   (台詞はあったんだけどぉ)

ふ   普通に面白かったから。俺、(もぐもぐ)実験中みたいなのが(もぐもぐ)あんまり好きじゃないのね、無言劇がどこまで実験かっていったら、斬新さ(もぐもぐ)っていうことでは別に違うのかもしれないけど、ちゃんと面白かった。実験中のものを見せられて、それを斬新という価値観が、良い悪いは置いておいて、俺の中には全くないから。稽古で実験して、こういう実験結果になりましたっていうのを俺は見せて欲しいのね。それで言うと、あれは不思議なことをやってる上で、面白い芝居としてしっかり成立してるから、面白かったなっていうのと、シュールなもの、何の葬式なんだろうとか、トミーは(富岡晃一郎さん)なんなんだろうとかさ。

 

さ   ふふ。

 

ふ   そういうものに変なリアリティーがあったから。よくわからないていうことだけで済ませるのは簡単なんだけど。例えばさ、それこそ小豆島じゃないけど、小豆島行って地元の人の葬式に参加したら、お?お?みたいな、これはどういう風習?っていう感じ。

 

さ   (うんうんうんうん)

 

ふ   指摘しちゃいけないんだろうなこの島の人たちにはこれが当たり前だから、みたいな面白さがあったのが面白かったの。

 

さ   すごいよくわかります。

 

ふ   あほんと?

 

さ   はいっ。

 

ふ   それは、今デッチあげただけで、

 

さ   なんだあ・・。(笑)

 

ふ   そこまで考えて見てたわけじゃなくて、単純にすげぇ面白いと思って。

 

さ   でっちあげたって・・・言語化したってこと?

 

ふ   そう(笑)。見てる時にそんなふうにさ、これは・・とか思って見てない、ごめん。別の言い方すると、客として見れたから面白かった。やっぱりさ、芝居作ってる端くれとして、なるほど頭良いなとか、なかなかすごい構成だなとか、さっきの前フリいつ回収するんだろうとか思いながら見ちゃう訳じゃない。ていうのを抜きにして、客として見れるのは、すごい嬉しい。お客さんとして見れたから、楽しいなっていう。

 

さ   うん。

 

ふ   …え、どう褒められたいんだろ?(笑)

 

さ   あはは。それは聞かなかったなぁ。(笑)

 

ふ   褒められたいこと言ってくれれば、それを俺が言ったてことにしてもらっても・・(笑)

 

さ   もうひとつ、江本さんが聞いてきてと言っていたことなんですけど。

 

ふ   うん。

 

さ   これを、最後の質問にしようかなぁと。わたし(佐久間)のことどういう役者だと思いますか?って。

 

ふ   (困った笑い)

 

さ   福原さんと私、一緒にお仕事している期間の方が圧倒的に短くて、

 

ふ   ははは。そうね。

 

さ   どんな関係か分からないひとの方が多いのかなと思うのです。

 

ふ   ははは。そうね。

 

さ   私、福原さんのお芝居を1番始めに見たのが、2008年のダンダンブエノ『ハイ!ミラクルズ』。その当時、ダンダンブエノが稽古していた場所と同じところで私も稽古をしていて、その稽古場の入り口に貼ってあったポスターを見て、光石研さんが出てる!と思って見にいったのが最初です。そしたら面白くて、福原さんのお芝居を見に行くようになって、福原さんに初めて声かけたのが三鷹の星のホールでやっていた『二死満塁の人々』、それが2009年かなー。ずっと福原さんの作品に出たいって思っていて、それが叶ったのが、2012年の『墓場、女子高生』で、それから、4年・・・(笑)

 

ふ   いつもね、例えば雑誌のインタビューとかで、好きな女優さんだれですか?って聞かれて、すごい困るのがさ、とくに舞台をやってると悲しい話でさ、この間見た芝居ですごい良かったっていう女優さんが、次もいいかなんか分かんないじゃん。映画だったら、50何年のフェリーニの『カリビアの夜』のジュリエッタ・マシーナが大好きです。って言えるんだけど。でも芝居だと、同じ演目でも俺が見た回以外でもその人が魅力的だったのかとか、判断つかないし、だから“2時間ほど良い女優さんだなって思ったことが過去に何度もあるけど、この先好きでいられるか自信ないです”っていうのが正直な答えだけど、そんな偉そうなこと言えませんし(笑)

 

さ   とても分かります。私も舞台見に行くとそう思うことあります。えーと、じゃあ、どの時が良かったですかっていう質問はどうですか。(笑)

 

ふ   それは、『墓場、女子高生』になっちゃうけど。

 

さ   そっか。(笑)

 

ふ   普通に良い女優さんって言われても面白くないんだよね(笑)?なんかね、違いを作れる役者だと思うんだけど。

 

さ   違い?

 

ふ   芝居は当然、台本と稽古に沿った大きな流れがあるんだけど、そこになんか、心電図がビヨーーンてなった方が良いわけじゃん。ビヨーーンてなるの、佐久間さんに任せると。それが良いなって思ってる。それじゃダメ?ふふふ。佐久間さんのところでビヨーーンてなるの。

 

さ   ビヨーーンてなるのか・・・。

 

ふ   お芝居のさ、観劇メーターが、ひっかかるっていう言い方でいいのかな・・。

 

さ   うは。ちょっとそれ、すごい下手な人が出て来たみたいな・・へへ。

 

ふ   ははは。そういうことじゃない。そういうことじゃない。自分のところに出てもらった時の感覚で言うと、こんなことになるんだ、ていう。俺、想像もしてなかったけどそれが見たかったっていうことがあるの。

 

さ   ほおー。

 

ふ   全く考えてもなかったんだけど、超それ見たかったよ、っていう。昔から見たかった気がするみたいなことがあって。そういう瞬間が作れる人なんじゃないかなって思ってるんだけど。

 

さ   なるほどおお。・・どうして行けばいいのだろう。これからは。どうして行ったら良いのですかねぇ。

 

ふ   ・・・生活感がないんじゃない?

 

さ   そう、ですかね。

 

ふ   悪いことじゃないけど。

 

さ   私、自分は何も持ってないって思っちゃうんですね。でも、人に良いって言われたりすることで、自分で自分のこと、どうして行ったら良いか分からなくなっちゃう。

 

ふ   顔じゃない?

さ   顔?(笑)

ふ   (笑)顔が普通の人間の顔じゃないからね。ふふふ

さ   普通の人間の顔じゃない?

 

ふ   違和感のある顔してるじゃん。ふふ

 

さ   それはなんだ・・

 

ふ   どう捉えていいか分からない。国籍が…、何人だろうって思うし。あとなんか、今、年齢が分からないんじゃない?

 

さ   それは本当そうだと・・

 

ふ   30歳に見えないけど、じゃあ20代かっていったら、なんか20代ともまた別の、外人さんって年齢分からなかったりするじゃん。みたいな感じになってるんじゃない?

 

さ   はいぃ。

 

ふ   どうしたら良いのか分からないけど。舞台に立つ人が、生活臭出る必要もないと思うし。難しいね。

 

さ   難しいです。

 

ふ   分かった!!どう考えてもどこにでもいる人に見えるっていう時間を、舞台上で、もうちょっと長くすると良いんじゃない?作品によると思うんだけど。

 

さ   ほう。

 

ふ   舞台に出て来て、佐久間さんの個性としてね、出て来て最初から何かしらの違和感が良い意味でもね、あるから。自分から勝手に出ちゃうものをどれだけ押し込めて、なんでもなく立っていられるかを考えてみれば。

 

さ   出て来ただけで違和感?

 

ふ   うん。

 

さ   なんなんだぁ、それ。(笑)

 

ふ   それは、いや、何なのって言ったら、女優のオーラとかさ、そういうことだから(笑)。魅力、とか、そういうことだから。

 

さ   でもですよ。本人は、凡人だと思ってる訳ですよ。

 

ふ   自分が持ってるものと、世間からの見え方がずれてる内は、いつまでもズレてるよ。ふふ

 

さ   (考える・・)

 

ふ   別にズレててもいいとは思うんだけど、合致すると、これ見たいんでしょっていうのをぱっと出すのがすごい早くなるっていうか、楽になるっていうか、見たいって言うお客さんも増えると思うよ。

 

さ   うん。

 

ふ   だって、見たいもの見れるんだもん。この人ってこういう人だよねっていう見たいもの見せてくれた上で、要所要所で裏切ってくれるっていう。あんたら、私のこれが見たいんでしょっていうぐらいの態度の中で、でも私はこれもやりたいんでついでに見てくださいよっていうのがあれば良いんじゃない?

 

(夕焼け小焼けが鳴り始める。18時!2時間近く話している!)

(約束の時間なので、さくま、そろそろと片付け始める)

ふ   突き詰めると、もっと演技上手くなればいいんじゃない?

 

さ   なるほど!(超ごもっとも)

 

ふ   うん。ふと思ったんだけど、今、年齢不詳とか国籍不詳とかお客さんとの合致とかいろいろ言ったけど、演技が上手ければ全て解決するよ。演技で出来ないことはないって立場で物作ってるんだから、俺達。だから私生活の問題も含めてさ、演技で解決すればいいんじゃないかと思う。

 

さ   つまり、俳優は演技で全てを可能にできるってことですよね。それって凄いことをやっているんだなと、改めて思いました。

 

ふ   シンプルに、我々反省して、頑張れば良いんじゃないか。

 

さ   はい。うんうん本当そうですね。・・もしかしたら、そう思われることに、私が寄ってるのかもしれない。例えば、年齢不詳に見られることとか、若く見られることに、寄ってるのかもしれないって、今思いました。

 

ふ   それがやり易いのかもしれないし。どっか年齢を曖昧にすることが。あと、年齢って何?ってこともあるし、典型的な30何歳とかさ、10何歳とかやってもしょうがないから、ある種の個性は入れたくなるだろうし。

 

ゴロンッ!(ペットボトルが落ちる。福原さんに当たる)

さ   あ!ごめんなさい。

 

ふ   (ペットボトルを拾う)

 

さ   自分が好きな役者さんって、ちゃんと年齢を重ねてる人なのに、自分がそうやって、

 

ゴロンッ!!(またペットボトルが落ちる。また福原さんに当たる)

さ   うははははは。すいません(笑)

 

ふ   怒ってんの?(ペットボトルを拾う)

 

さ   怒ってないです。片付けてるの(笑)。自分がそうやって寄っていってしまうのは何でなんだろうって思いました。・・楽なのかもしれないですね。

 

ふ   うん。

 

さ   楽というか、とにかく圧倒的にそう言われる機会が多いので、そうであるべきっていつからか思ってしまったのかもしれないです、自分で。あと、みんな優しいからなー(笑)若い人に。

 

ふ   あ、そうなんだぁ〜。俺、いくつになっても年上好きだからね。

 

さ   あ、そうなんですか?

 

ふ   あのね、若い頃から、30代くらいの人が好きで、自分がどんどん歳重ねてって、30歳くらいになった時に、同い年くらいの人が好きになって、あ、ようやく追いついたなって思ったんだけど、今度そのまま上がり出して、今や、40歳50歳の女の人が好き。ぐふふ(エロい、楽しそうな顔)

 

さ   へえぇぇぇぇぇぇぇぇ

 

ふ   うん

 

さ   じゃあ、そんなところで・・。(突然の終わり)

 

ふ   え。大丈夫(これで)?俺、だめな気がするなぁぁ(笑)

 

 

 

(おわり)

* 編集後記 さくまより *

というわけで、編集長さくまの初めての対談企画、これにて終わります。

当初、1時間ほどの対談の予定が、たのしくって、気がつけば1時間50分も話していました。ブラインドタッチが出来ない私は、記事の文字を起こすだけで4日もかかってしまいました。ボイスメモに録音した対談を何度も聞くのは、自分だけのラジオみたいで、いつまでも飽きなかったです。

冗談と本気が混じっている福原さんのお話の数々、冗談の中に潜んでいる核心を逃すまい!とあくせくしました。

私には掘り起こしきれなかったかもしれない核心も、探してみてくださいね。

あ!次回もすぐにあります!あの人とあの人の対談をお届けします〜。

福原充則

Mitsunori Fukuhara

*プロフィール*
02年、ピチチ5(クインテット)旗揚げ、主宰と脚本・演出を務める。また「ニッポンの河川」、「ベッド&メイキングス」など複数のユニットを立ち上げ、幅広い活動を展開する。近年はテレビドラマでも数々の脚本を執筆。15年公開「愛を語れば変態ですか」で映画初監督。

*今後の予定*

【脚本】
月影番外地 その5『どどめ雪』
2016年12月3日(土)〜12日(月)
下北沢ザ・スズナリ
【脚本・演出】
ベッド&メイキングス『あたらしいエクスプロージョン』
2017年3月
浅草九劇(こけら落とし公演)

photo by  Michiko Akagi

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