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今年の二月に上演された「黒い三人のこども」を観た。

毛皮族の頃の江本さんのお芝居は、派手な動きと雨あられのように降り注ぐシニカルなセリフに、息つく間もなく笑うという印象だった。ところがそれが一転。セリフも動きも最小限。どこにでもある、人生の一コマを切り取っていた。

なのにものすごく滑稽で笑えてしまう。うん、こんなこと私にもあった。そうそう、こんな風に振舞っちゃうこと、ある。そうか、傍から見ればこんなに笑えるものなのか。説明的なセリフもナレーションもないのに、三兄弟が、それぞれどんな性格で、どう生きてきたのかまで、鮮やかにそして浮かび上がってくる。シニカルで笑えるのだけれど、同時に心温まってもくる。

今度の舞台は小豆島の造船所跡。こういっちゃなんだが、夢に出てくる廃墟、みたいな場所なのだ。彼女たちはここにどこからどんな人の日常あるいは非日常を切り取ってきて見せてくれるのだろう。まったく想像もつかないのだけれど、楽しみで仕方がない。

 

内澤旬子

作家・イラストレーター。2014年小豆島に移住。著書に『世界屠畜紀行』解放出版社、『身体のいいなり』朝日新聞出版、『捨てる女』本の雑誌社、『飼い喰い 三匹の豚と私』岩波書店など。

新刊『漂うままに島に着き』朝日新聞出版、8月19日に発売。

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